• お役立ちコラム

静脈の機能

2025.01.16

これって静脈瘤のせい?判断に困る症状

下肢静脈瘤が存在するかどうかは簡単にわかりますよね。脚の血管がボコボコしていたらまず間違えることはありません。こんなに簡単に見分けのつく病気は他に思い当たらないくらい簡単です。

 

あまりにわかりやすいので、脚の困った症状がなんでもかんでも静脈瘤のせいにされてしまっていることがあります。脚のむくみ・だるさ・痛み・皮膚炎など、静脈瘤のせいで生じているものもたくさんありますが、原因が他に考えられることもしばしばあります。明らかに関係ないと考えられる症状(太ももからお尻のピリピリした痛み、膝の痛み・腫れ、足裏の砂を踏んでいるような違和感など)から、われわれ専門家でも悩んでしまうような微妙なものまでたくさんの症状があるのです。

 

たとえば「足のむくみ」、下肢静脈瘤の症状の一つとしてよく紹介されます。しかし、個人的な印象としては「むくみ」だけが気になって来院された患者さんのむくみの原因が下肢静脈瘤であったことはあまり多くありません。下肢静脈瘤は血管がある程度目立っていても、意外と症状の出にくい病気です。なので、下肢静脈瘤にむくみが伴われるのはある程度病気が進行してからというケースが多くなります。そう考えると、下肢静脈瘤が原因でむくみを生じている例ではむくみ以外の症状(血管のボコボコ、だるさ、場合によっては皮膚炎など)もそれなりに伴っているはずなんです。(もちろん、例外もありますが)診察では、下肢静脈瘤ではないむくみの原因なども含めて詳しくご説明いたします。

 

足首から足の「むくみ」というのもあって、これもやはり瘤が見あたらない場合は下肢静脈瘤が原因であることは非常にまれです。これは超音波検査で簡単に区別ができるのですが、足首のむくみの原因で一番多いのは関節周囲の炎症です。加齢により関節が変形すると関節の周囲に炎症が生じますし、変形した骨により腱などが傷つけられると腱の周囲に炎症が起こります。その結果関節や腱の周囲に液体がたまり、太く見えるのです.つまり、「むくみ」というのは、決定的な下肢静脈瘤の症状というわけではないのです。どちらかというと、いろいろな他の症状や瘤が目立つ患者さんの脚を観察するとむくみを伴うことが多いというイメージです。

 

「湿疹、色素沈着」などの皮膚症状も悩ましいです。下肢静脈瘤によって生じる皮膚炎はボコボコした血管に沿っていたり、ふくらはぎの内側に限定していたりと、場所と形が特徴的であることがほとんどです。なので、診察すれば下肢静脈瘤と関係が弱そうな皮膚炎は判別できます。それでも、まれに不思議な事がおこることもあって、はっきりと「これは静脈瘤のせい」「これは違う」と明確に線引きすることはできないです。一見すると静脈瘤との関係が弱そうな皮膚炎でも、手術から数週間後に良くなっていることがあるのです。逆に、明らかに違うものの代表例は「網状皮斑」、「慢性色素性紫斑」などです。かなり特徴的ですので、意識して診察していると間違えることはありません。いずれにしろ、皮膚炎を伴う静脈瘤がある方は早めに来院されることをおすすめします。

 

「痛み」は表現が個人個人で異なることもあって、やはり判断の難しい症状です。一般的に言うと下肢静脈瘤によって引き起こされる痛みは全体的な重さ・だるさ・ジーンとした鈍い痛みが中心で、長時間の立ち仕事の後や夕方に強くなるという特徴があります。それに対して狭い範囲の鋭い痛みや特定の動きで強くなるような痛みは整形外科的な疾患が原因であることが多いように感じます。ただ、たとえば静脈瘤に血栓を伴う場合は局所的な痛みを生じますし、静脈瘤の周囲にピリピリした痛みを認めるケースもわずかにありますので、決めつけてしまうのはよくありません。

pagetop

c 2018 やまもと静脈瘤クリニック.