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静脈の機能

2025.01.16

静脈瘤の進行をグラフにしてみました

下肢静脈瘤はゆっくりと進行し続けます

下のグラフをご覧ください。横軸が年齢でお年を召されるほど右、縦軸が症状で悪化するほど上にくるようになっています。

下肢静脈瘤はゆっくりと一定のスピードで悪化し続ける病気で、ガンのように急に悪くなったり、風邪のように自然に治ったりすることはありません。

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妊娠・出産の時は特別です

ただし、妊娠・出産の時だけは特別です。妊娠すると(おそらく、女性ホルモンのバランスが変わる影響で)下肢静脈瘤が急に悪くなることがあります。妊娠6ー8ヶ月くらいで、慌てて受診される妊婦さんは大勢おられます。

でも、ご安心ください。妊娠の時に急に悪くなったものは、出産後にある程度改善することがわかっています。

妊娠すると急に悪化する

悪化するスピードは体質による

では、若くして静脈瘤の手術が必要になる方と、一生手術が必要ない方とは何が違うのでしょうか?

下肢静脈瘤を悪化させる原因として、いろいろなことが言われています。例えば立ち仕事や肥満の影響です。昔から数多くの調査がされているのですが、実は立ち仕事や肥満が下肢静脈瘤を悪化させるというしっかりとした確証はありません。調査によっては少し影響を及ぼすようなデータもありますが、絶対的なものではないのです。

もっとも強い影響を及ぼすのは、残念ながら持って生まれた体質です。それが、年齢を重ねるにつれ悪化していくと考えてください。

悪化するスピードは人それぞれ

治療を受けるとどうなるの?

下肢静脈瘤の治療を受けるとどうなるのでしょうか? 「病気を治療する」というと病気が永遠に解消されることをイメージされるかもしれませんが、残念ながら下肢静脈瘤でそれはありえません。

では治療後どうなるかというと、「症状が改善される」というのが正解です。壊れている静脈を減らすことで、様々な症状を改善することを目的として治療を行います。

手術をすると当然改善します

治療して終わりではありません

では、治療後はどうなるのでしょうか?

療した部位の血管は無くなりますが、足には無数の静脈があり、治療しなかった(壊れていなかった)静脈がまた壊れてくることがあります。そして年月を経てまた下肢静脈瘤の症状が出現することがあり、それを再発と呼びます。

手術後にも徐々に悪化します

再発の頻度

どれくらいの頻度で再発するか、過去に幾つかの調査が行われています。調査によって再発の基準などがバラバラですが、だいたい1年間で3%程度が再発すると言われています。「3%」というと少ないようですが、10年経つと30%にもなります。

そしてある程度悪化したものを再発と言います

再発例への治療

再発した場合でももちろん治療は可能です。ただ、どんな手術でも同じですが、再発例への治療は初回の手術よりも困難で複雑なものになる可能性が高いです。それをなんとかするのが専門家の役割でもあるのですが・・・ 

ともあれ、声を大にして言いたいのは、再発が少ない治療が患者さんはもちろん私たち治療する側にとっても理想的な治療です。

再発例への治療は最初よりも難しいことが多い

再発を減らすにはどうするか?

ここまでの説明でわかるように、再発を減らすことには大きな意味があります。では、どうすれば再発を減らすことができるのでしょうか? 答えは「できるだけ故障した静脈を減らす」というシンプルなものでした。別で下肢静脈瘤のタイプについて詳しく説明していますが、故障した伏在静脈(伏在静脈も何本かあるんですが)だけではなく、側枝静脈に対しても積極的に治療を行うのです。

海外での調査では、側枝の治療を追加することで、治療後の症状や再発率が大きく改善されることがわかっています。

ただし、当然ですが治療する部位が増えるほど、手術時間は延び、傷は増えます。もし傷の治りが悪かったりすると、手術に対する不満が高くなってしまいます。それを恐れて側枝への治療を避けている施設も多いと思います。

でも、もし側枝への治療を追加しても、痛みや傷や合併症が増えないなら誰だって追加して欲しいはずです。

その思いから側枝への治療(スタブ・アヴァルジョン)に取り組んできました。

再発を減らすためにしっかりと治療します

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