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静脈瘤の治療法

2025.01.16

クモの巣状静脈瘤をあきらめない!

クモの巣状静脈瘤

数年前に初代の「クモの巣状静脈瘤をあきらめない!」を書きました。ただ、記事を読むとわかるのですが、それは「あきらめない!」という決意表明であり、その時点ではクモの巣に対する治療は確立されていませんでした。ただ、その後もクモの巣の治療法をずっと研究してきました。そして今、かなり満足できる治療に近づくことができましたので、記事を改訂します。

 

2024/12月改訂

クモの巣状静脈瘤は痛みやだるさなどの症状を引き起こすことはないため、心配のないタイプだと説明され放置されている例をよく見ます.たしかにそのとおりなのですが、その外見が気になって友人との温泉旅行を我慢したりスカートを履けなかったりと、活動が制限されて困っている方はたくさんおられます.このクモの巣の治療について詳しく説明したいと思います.

まず、細い静脈瘤を細かく分類します。クモの巣状静脈瘤とは写真のような細く赤い静脈瘤のことです。そして、クモの巣の周囲にはやや青く太く見える静脈瘤が潜んでいることが多いです。それを網目状静脈瘤と呼びます。この2つは、血管の太さや深さが異なるので、それぞれで最適な治療が異なります。

クモの巣状静脈瘤や網目状静脈瘤に対する治療法

次にそのような細い静脈瘤に対して当院で行なっている治療法を説明します。(1)最も多く使っているのがレーザーです。静脈瘤へのレーザー治療と言うと、血管内に光ファイバーを挿入して行うものが普及していますが、ここでのレーザーは脱毛治療のように、体の外から照射するレーザーです。(2)一般に最も普及しているのは硬化療法です。硬化剤という薬剤を注射し、血管にダメージを与える治療です。(3)スタブアヴァルジョンという、小さな傷から血管を摘出する手術を行うこともあります。それぞれの治療法をもう少し詳しく紹介します。

レーザー

従来は、クモの巣に対してのレーザーの効果は弱いとされていました。でも、世界にはクモの巣をとても熱心に治療している先生が多数おられ、その方法を調べるとレーザーは大きな役割を果たしています。やはり、レーザーは有効な治療です。開業時の理念である「すべての静脈瘤に対応する」を実現するためには、レーザーは必要だと考え導入しました。今では、ほとんどのクモの巣に対してしっかりとした効果が実現できています。また、色素沈着などの副作用が少ないことも大きなメリットです。あえて欠点を挙げると、照射の際に多少の痛みがあります。今では、当院でのクモの巣状静脈瘤治療に欠かせない存在です。

硬化療法

血管にダメージを与える硬化剤を注射する治療です。注射するだけでできるので、とても簡単な治療に見えますが、実は良い結果を出すのが難しい治療です。硬化療法を難しくしているポイントは2つあります。まずはクモの巣のような細い血管に注射することがそもそも難しいということ。そして、治療後に色素沈着を生じること。硬化剤でダメージを受けた血管には必ず炎症が起こります。その炎症によって皮膚に茶色っぽい色がつくことを色素沈着と呼びます。この数年間で、治療に用いる硬化剤の種類や濃さを研究し、かなり色素沈着は減りましたが、やはり完全に防ぐことはできません。

スタブアヴァルジョン

10年前からずっとこだわってきた治療です。仕組みは簡単で、皮膚に小さな針穴を開け、その穴から挿入したフックで血管を引っ掛けて、抜いてしまう。単純な作業ですが、単純なものほど奥が深く、どれだけ極めたと思っても、日々進化しています。網目状静脈瘤に対しては、最も綺麗な結果を出せる治療だと思っています。

 

これらの治療法を組み合わせることで、クモの巣状静脈瘤や網目状静脈瘤に対する治療法が確立でき、「すべての静脈瘤に対応する」に限りなく近づいたと考えています。でも、まだ残っている宿題もあります。

  1. 完全に消えるわけではない。治療の際にはできるだけ多くの血管を処理するように努力していますが、どうしても残るものがあります。
  2. 治療の痛み。硬化療法には注射の痛みがあり、レーザーにも痛みが伴います。そしてスタブアヴァルジョンにも痛みがあります。和らげることはできますが、まだ工夫の余地があります。
  3. 時間。数ヶ月の経過でかなり薄くなりますが、治療した部位にはある程度色素沈着を生じます。また、治療の内容によっては皮下出血なども生じます。ですので、治療した部位が明らかに良くなったと言えるまでに数ヶ月の時間が必要です。

これからはこれらの宿題を解決できるように進んでいきます。

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