側枝とは?
下肢静脈瘤を構成する静脈は、基本的に皮下脂肪の中にあります。そして、脂肪は薄い膜によって複数の層に分かれます。その深い層を走行する静脈を伏在静脈(理解を簡単にするための表現です)、そして浅い層を走行する静脈を側枝静脈と呼びます。そして、下肢静脈瘤の中で、症状を伴って手術などの積極的な治療が必要になるタイプは、この伏在静脈と側枝静脈が共に故障しているケースがほとんどです。
伏在静脈への治療が中心となった理由
その昔、検査法、麻酔法などが成熟していなかった時代は、とても複雑な静脈瘤のどこをどう治療するかというのは難しい疑問でした。できるだけ患者さんのダメージを少なく、最大限の治療効果を得るために、最も効率の良い方法が模索されました。その中で、伏在静脈に対する治療が重視されるようになります。さまざまな理由がありますが、技術的には、画像診断が普及していなかった時代に、解剖学的に一定の場所に存在する伏在静脈は治療の目標にしやすかった、走行が直線的であることが多く、屈曲した側枝よりも手術などが行いやすかった、などが挙げられます。病態から言うと、当時は伏在静脈の故障が諸悪の根源であると考えられていたため、その根源を処理することで効率よく病気を根絶できると考えられていたことも、伏在治療が重視された理由です。
その傾向は、近年になって加速します。超音波機器の発達によって、伏在静脈の検査がより精密かつ詳細に行えるようになったのです。さらには、超音波機器を使った血管内治療が普及したことも大きいです。血管内治療で用いるカテーテルは曲がりくねった側枝よりも、比較的まっすぐな伏在静脈の方が相性が良く、伏在静脈に対する治療の難易度が大きく下がりました。
その流れの中で、側枝に対する治療は常に(時には意図的に)見過ごされてきました。今でも、側枝の治療を行わない先生は多数いて、彼らは側枝を治療しない理由として「手術が早く終わる」、「手術のダメージが少ない」、「残った側枝は自然に消える」と主張していますが、実際はどうなんでしょうか? この疑問はかなり前から話題にされてきましたから、数多くの信用できる調査が行われていて、十分なデータがあります。ここからは科学的な事実を元に、よくある質問にお答えします。
側枝治療をしなかったらどうなる?
「放置した側枝は少し細くなって残存する」
伏在だけの治療を行い側枝を放置した場合に、数ヶ月後に側枝は半分程度の太さになることがわかっています。実際には血管は脂肪の中にいて、過剰に太くなった部分だけが患者さんから見えているのですから、その太さが半分になると外見上はもっと少なくなったように見えます。
「1年で60%、5年で80%の患者さんに追加治療が必要になる」
伏在だけの治療を行い側枝を放置した場合に、側枝への追加治療を必要とした割合を調査した報告が多数あります。それぞれで数値は異なりますが、平均するとタイトルのように1年で60%、5年で80%の患者さんに追加治療を必要としました。先ほど挙げたように、伏在の治療によって側枝はやや細くなるのですが、その弁の故障が治るわけではありません。そのように残存した故障が、別の部位の故障を誘発することで拡大して、再び症状を引き起こすことがあり、いわゆる再発の原因となるのです。
山本 崇
やまもと静脈瘤クリニック




