心臓と動静脈
心臓は筋肉の動きと逆流防止弁の働きで血液を送り出す臓器です。心臓から送り出された血液は動脈を通って体中に運ばれます。動脈は途中で何度も枝分かれし、最後は非常に細い毛細血管となって、組織に酸素を届けます。逆に、二酸化炭素を回収した血液を心臓に送り返すのが静脈で、動脈とは反対に毛細血管が合流して少しずつ太い静脈となり、心臓に帰っていきます。
そして、実は心臓の中の圧力や大きさは常に変化しています。心臓は「ポンプ」に例えられることが多いですが、プールで浮き輪を膨らませるときに使う足踏みポンプなんかは心臓と全く同じ仕組みで動いています。簡単に説明すると、ポンプには入口と出口があり、それぞれに一方通行の弁がついています。ポンプを踏んだ時は中の圧力が高くなり、出口の弁が開いて空気が送られます。その時、入り口の弁は閉じているので空気が入り口から漏れることはありません。足を離すと、ポンプは膨らんで中の圧力が低くなります。その時は、入り口の弁が開いて空気を吸い込み、出口の弁は閉じるので、いったん送り出された空気が逆流することはなく、空気の流れは一方通行です。
心臓はこのポンプを少し複雑にしたような構造です。心臓は筋肉が緩んで大きくなる拡張期と、筋肉が緊張して小さくなる収縮期を繰り返していて、それに逆流防止弁の働きが加わることで、静脈側から動脈側に一方通行で血液を流しています。
静脈には逆流防止弁がある
動脈は心臓から送り出された血液を体中に届ける管です。心臓から離れると何度も枝分かれをして、枝分かれの度に細くなり、最後は毛細血管となります。この動脈には逆流防止弁はありません。そもそも心臓からの圧力が強いので弁が無くても流れは維持されるからです。それに対して静脈の流れは微妙です。心臓のポンプ効果とか、呼吸の動きとか、色々な弱い力が束になっていますが、その全てを合わせても圧力が低いので動脈ほどの流れにはならないのです。その静脈ができるだけ効率的に血液を運べるために静脈の中に逆流防止弁が必要なのです。
脚の筋ポンプ
同じ静脈といっても、場所によって流れのスムーズさは変わります。例えば、頭は立っていても座っていても心臓よりも高い位置にあり、静脈の血液が心臓に戻るときは重力に助けてもらうことができるので、頭からの静脈血流はスムーズです。それに対して、脚は寝ている時以外ずっと心臓より低い位置にあり、脚から心臓に血液を返す際には重力が邪魔をします。つまり、脚の静脈は体の中で最も流れが期待できない場所だと言えます。
ですので、その脚から心臓に血液を返すための仕組みが備わっていて筋ポンプと呼ばれています。筋肉は力を入れると太く短くなり、力を緩めると細く長くなります。そして、筋肉の間には太い静脈があり、筋肉の動きによってその太さが変わり、流れを生み出すのです。その中でもふくらはぎのポンプが最も重要な役割を果たしており、歩行中には脚からの静脈灌流の65%以上を担っていると言われています。その筋肉の動きによる体積の変化と逆流防止弁による流れの調節の仕組みは、心臓の働きととても似ているので、脚は「第二の心臓」と言われることもあります。
脚の静脈
脚の静脈の解剖図を見てみましょう。このような解剖図で一般的に表現されるのは深部静脈といって、筋肉の間を走行する大きな静脈です。深部静脈は大きいだけではなく、筋ポンプによって血流が生み出されたり、脚からの静脈の流れのほとんどがこの深部静脈を経由していたりと、重要な役割を果たしています。
次に脚を輪切りにすると、下の図のようになります。最も外に皮膚があり、皮膚の下が皮下脂肪、皮下脂肪の下に硬い筋膜があり、その下が筋肉です。大きな動脈や深部静脈、骨、太い神経などの身体にとって重要なものは、この筋膜の下に配置されています。そして、皮下脂肪の中を走る静脈をまとめて表在静脈と呼びます。
さらに、次の図は皮膚から皮下脂肪の拡大図です。脂肪の中にも薄い筋膜があって場所によっては複数の層に分かれることがあり、その中で最も深い部分を走行する静脈が伏在静脈、それ以外を側枝静脈と表現します。その他、細い細静脈や毛細血管は無数に存在しています。つまり、表在静脈も太さや深さによって、伏在静脈、側枝静脈、細静脈、毛細血管などと区別されます。(理解をしやすいように、解剖学的な表現はかなりシンプルな形にまとめています)この表在静脈の逆流防止弁が壊れることによって生じる病気が下肢静脈瘤です。
山本 崇
やまもと静脈瘤クリニック




