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下肢静脈瘤について

2026.04.26

便利な生活の代償

意外かもしれませんが人は長距離移動が得意です

実は、陸上動物の中で人類はかなり長距離移動が得意な生き物だと言われています。馬とかチーター、ゴリラ、象、猿などの動物に対して、短距離を走る速度とかジャンプ力、筋力などでは大きく劣ることが多いので、なんとなく人は他の動物より運動が苦手なイメージを持っておられる方が多いと思います。確かに瞬間的な動きではその通りかもしれませんが、長距離移動だけは別です。人類には、汗をかくことによる体温調節や、エネルギー効率の良い完全二足歩行など、長距離を走るための構造がたくさん備わっています。大昔の人類は、この特徴を利用して大型動物を長時間追い回し、疲れたところを仕留めるという狩りをしていたと言われています。もちろん、筋肉の動きにより静脈の流れを促す筋ポンプの仕組みも、それに貢献していることは間違いありません。

そのような二足歩行に適した構造は、190万年前にはすでに備わっていたようです。そして、およそ30万年前に私たちホモ・サピエンスがアフリカで誕生します。身体能力ではネアンデルタール人など人類の他の種に比べて劣っていたようですが、集団能力などで優れ、狩猟採集生活をしながら世界中に拡散しました。そして、定住農耕生活を始めたのが1万年前、現在のような飲み水や食糧に困ることのない生活が始まったのがおよそ200年前です。個人の寿命と比べると200年は長い時間に見えますが、人類の長い進化の過程の中ではごくわずかな時間です。

文明的な生活の代償

このように人類は何十万年にも及ぶ長い歴史のほとんどで狩猟採集によって食糧を得ており、長距離歩行に特化した体の構造がそれを支えていました。それに対して、文明がもたらした座る時間の長い生活が始まってからの200年ははるかに短いため、私たちの体はまだ現代生活に適応していません。現代の生活スタイルが引き起こす問題として、肥満、アレルギー、睡眠障害、腰痛などが有名ですが、静脈の流れが滞ることも見逃せない問題です。

ふくらはぎの筋肉が活動することにより脚の静脈の血流が促されることがわかっており、「第二の心臓」と呼ばれます。そして、現代の座りっぱなし、立ちっぱなしで歩く距離の少ない生活は、この「第二の心臓」を自分で止めているのと同じで、そのように静脈の流れが滞った状態を「静脈うっ滞」と呼びます。静脈うっ滞によって、脚のだるさやむくみ、皮膚炎などの症状が引き起こされることがあります。

山本 崇

やまもと静脈瘤クリニック

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