スタブアヴァルジョンとは?
側枝を治療する方法の一つで、皮膚に小さな針穴を開け、その針穴から先の曲がったフックを差し込み、側枝を吊り上げて取り除く手術です。側枝の治療法として、おそらく世界で最も行われている方法と言っていいと思います。スタブアヴァルジョンが発明される前は、側枝の治療はもっと大変でした。以前は、ぐにゃぐにゃした側枝に沿って、皮膚を2cmくらい切って、中の側枝を直接見ながら取り出していました。当然、一つの切開から取り出せる範囲には限界がありますから、多い人では20箇所くらい切って行うこともありました。切った場所は全部縫合する必要がありますから、すごく時間のかかる作業でした。時間がかかるだけではなく、縫合された傷が治るまでそこそこ痛かったりシャワーが禁止になったりと、患者さんにとっても辛い治療でした。
それに対して、スタブアヴァルジョンは針穴から行うので、縫合する必要がなく手術時間が大きく短縮できました。そして、早期からのシャワーや入浴が可能になったり、痛みが少なかったりと患者さんにとっても、負担が少なくなりました。
ほぼ一目惚れ?
新しい手法が紹介されると、私達医師は通常は半信半疑といった感じで試します。そして、なにか使いにくい部分も感じながらも、新しい方法だということで少しずつ受け入れるのが普通です。しかしスタブアヴァルジョンに関しては、試しに使った印象がとても良かったのを覚えています。初回からとても使いやすくて結果も良く、その日に導入を決意しました。
出会った時からの一目惚れというと言い過ぎかもしれませんが、フックとモスキート鉗子はこれまでに最も長い時間付き合ってきた手術道具です。フックはチタン製のものを愛用しています。一般的に手術で使う機械のほとんどはステンレスで作られます。丈夫で錆びないこと、そして加工が比較的容易で、適度にしなることが特徴で、おそらく手術用機会の90%以上はステンレスで作られています。それに対して、チタンは軽さと強さが特徴です。そしてほとんどほとんど曲がらないことも特徴です。曲がらないことに関しては、使い道によっては好き嫌いが分かれます。例えば鉗子などでは、ステンレスならではのしなりが無いとダメな場合もあり、私もモスキート鉗子はステンレスのものを愛用しています。ただフックだけは、チタンの軽さと硬さ、丈夫さ、その全ての特徴が完璧に目的にフィットしています。他の施設への手術指導に行った際などに、ステンレスのフックを手にする機会があるのですが、その度にチタンのフックが恋しくなるほどです。
数ある側枝への治療法の中で、手術中に側枝を直接取り除くことができるただ一つの方法です。個人的には側枝への治療法の中で最も優れていると考えています。他の方法は側枝の血管壁にダメージを与えるもので、その後、ダメージを受けた血管が閉塞し硬結となって数ヶ月で分解吸収されるまで、治療部位にはしこりを触れます。それに対して、スタブアヴァルジョンでは、直後から血管が消え去った姿を実感できます。ただし条件があって、「うまくいった場合」です。
でも難しい
スタブアヴァルジョンが上手くいかない要因はたくさんあります。患者さんの要因では血管の癒着が問題となります。静脈瘤の血管には常に炎症が生じていて、その影響で周囲の組織とくっつくのです。くっついた血管は引っ張っても出てきませんので、スタブアヴァルジョンで処理することはとても難しくなります。そして、手術を行う医師の技量が問題となることはもっと多いです。普通の手術は、その対象を目で見ながら行います。昔ながらの外科手術では肉眼で対象を見ていましたし、対象が小さければルーペを使っていました。近年は腹腔鏡手術やロボット手術が盛んですが、それでも対象をカメラで見ながら行います。血管内治療みたいに超音波を使う場合もあれば、透視装置を使う場合もあります。いずれにしろ、対象を目で観察しながら行います。人間の感覚の中で、おそらく最も発達しているのが視覚です。それを最大限に活用するのが他の手術です。それに対して、スタブアヴァルジョンは対象の血管を見ることができませんから、手の指の感触だけが頼りです。血管と他の組織の感触は異なりますから、その違いを感じ取って血管だけを取り除く。そこが、慣れない医師にとっては大きな壁になるようです。
山本 崇
やまもと静脈瘤クリニック




