側枝焼灼の仕組み
側枝の治療法は、何十年にわたって、硬化療法とスタブアヴァルジョンで固定されてきました。この10年ほどで、その状況を覆しているのが側枝焼灼術です。仕組みはシンプルです。伏在静脈を焼灼する時と同じで、血管内にファイバーを入れ、血管の内側から熱を加える。実はもっと前からこれに挑戦した先生はおられましたが、あまり普及しませんでした。その側枝焼灼が広く普及することになったターニングポイントは、ファイバーが細くなったことでした。
伏在静脈と側枝では血管の形が大きく異なります。伏在静脈はほぼ真っ直ぐなので、血管の中に入れたファイバーは簡単に遠くまで進めることが可能で、一般的には1箇所から針を刺すだけで長い距離の治療ができます。でも側枝は見ての通りぐにゃぐにゃと曲がっていますから、せっかく針を刺してもファイバーを進められる距離は限られ、全体の治療をするには何度も何度も針を刺す必要があるのです。以前に使われていた太いファイバーを血管に入れようと思ったら、血管に針を刺してから、ガイドワイヤーやシースといった道具を使う少し複雑なステップが必要で、側枝に対して何度も何度もその作業を繰り返すのはあまりに効率が悪かったことを覚えています。針の中を通せる細いファイバーが開発されたことで、ファイバーを入れる手順がシンプルになり、繰り返して針を刺す作業が可能になりました。
側枝焼灼の特徴
側枝焼灼のメリットは何でしょう。まず、スタブアヴァルジョンと比べてみましょう。スタブアヴァルジョンでは小さいながらも皮膚を切りますし、血管をちぎる手術ですから、抗血栓療法を受けている方には行えません。また、皮膚炎によって血管の癒着が強い例では、血管が取り出せないこともあります。それに対して、側枝焼灼は抗血栓療法を行っていても癒着が強くても安定して行えます。そして、硬化療法と比較すると、治療部位への効果が確実であること、治療後の硬結が小さいことなどが強みです。
簡単にいうと、スタブアヴァルジョンより汎用性があり、硬化療法より信頼性があります。そして、その安全性については、多くの報告によって確認され、日本ではその安全な使用に関するガイドラインも定められました(私もその編纂に関わりました)。現在は次のステップとして、他の側枝治療手段(スタブアヴァルジョン、硬化療法)との比較や使い分けといった、より実践的な部分での側枝焼灼の価値を見出していく作業を行なっています。
ただし、問題点もあります。治療後の血管についてです。焼灼術では焼かれた血管の形は残ります。その残骸の中に血液が流れ込んで固まり血栓が形成されます(まとめて硬結と表現します)。その硬結が治療範囲に残ってしまうのです。実は焼灼術を伏在静脈に対して行った場合も同じことは起こっていますが、伏在静脈は少し潜ったところにあるため、硬結が問題になることはあまりありません。しかし、側枝は皮膚の直下にあるため、硬結がしばしば問題となります。硬結は、死んだ組織ですから身体の新陳代謝によって徐々に分解され、6-12ヶ月で無くなることがわかっています。ただ、それまでは硬いしこりとして触れたり、痛みを感じたり、色素沈着を生じることがあります。
結局のところ、側枝焼灼にスタブアヴァルジョンや硬化療法を含めて、どの治療法も長所と短所があり完璧ではありません。ですから、最高の結果を得ようと思うと、そのいくつかを場所によって使い分ける必要があります。その長所が際立ち短所が目立たないような、最善の組み合わせを考えるのが、私の仕事です。
山本 崇
やまもと静脈瘤クリニック




