硬化療法の仕組み、特徴
血管壁の細胞にダメージを与えるような薬(硬化剤と言います)を注射して、静脈瘤の血管を破壊する治療です。注射だけで簡単にできること、そして薬が流れてくれるので複雑な形態の静脈瘤にも使えることが長所です。実際に、再発例とか陰部静脈瘤などの、血管が癒着していたり、曲がりくねっていたりと他の手段では治療が難しそうな症例では硬化療法に頼ることが多くなります。反面、注射した部位でも効果が弱いことがあったり、その効果の広がりを確認しづらかったりと短所もあります。ですから、個人的には、他の手段(焼灼術、塞栓術、スタブアヴァルジョンなど)が使えないような部位への治療に活用しています。そう表現すると、出番が少なそうに聞こえるかもしれませんが、実際には先に挙げたような、再発例・陰部静脈瘤だったりでは主役として活躍しますし、それ以外の手術を行う際にも、複雑な部位に対して硬化療法が貴重な脇役として渋い働きをしてくれることはよくあります。
硬化療法は軽視されがち
このように、硬化療法は下肢静脈瘤の治療を行う上で、欠かせない重要なピースです。ですが、下肢静脈瘤の治療法の中で硬化療法はずっと蔑ろにされてきました。理由は、いろいろあると思います。まず、体系的に勉強する機会がほとんど無いこと。勉強しなくても簡単にできてしまうから(もちろん適当にやったら結果は悪いですよ)。治療の結果が思ったようなものでは無いから。私は、硬化療法は血管内治療よりもはるかに難しい治療だと考えています。血管内治療と比べて、結果が安定せず、術後の圧迫など管理の手がかかります。
実は、硬化療法に対する考え方は日本と海外でかなり異なります。もちろん、海外と日本で患者さんの体に大きな違いは無いのですが、保険医療の仕組みだったり、疾患に対する考え方だったりといった社会的な部分で差があります。日本では「静脈瘤をできる限り根治したい」という考えが強いですが、ヨーロッパでは、「静脈瘤という病気とうまく付き合っていく」という考えが強いです。症状を和らげながらうまく付き合うとしたら、硬化療法は良い選択肢です。治療に伴う痛みや負担は軽く、生活への影響も少ないですから。根治を目指して徹底的な治療をしても、ある程度の患者さんには再発を生じることを考えると、最初から根治を目指さず、楽な治療で定期的にメンテナンスを行うことは合理的な選択だと思います。ですので、海外では日本より高頻度に硬化療法が行われ、当然のようにその研究も多く行われてきました。
その中で、最も影響力のある成果が「フォーム硬化療法」です。フォーム硬化療法については別の項目でしっかりと説明します。
硬化療法後の経過
ここでは、硬化療法の後に起こる反応について説明します。硬化剤が作用した血管壁の細胞は死んでしまいます。そして、血管は死んだ細胞に覆われた管になり、内部で血液が固まり(血栓)、血栓で血管が詰まります。その後、この死んだ部分が血流のネットワークから完全に切り離された場合は、その部分がソーセージのように残ります。逆に、血流と繋がった状態が維持されると、徐々に血栓が分解され、死んだ内膜が再生されて元の血管に戻ります。このソーセージによる硬結がしばしば問題となります。問題は大きく3つあります。痛み:血栓が最も充満している時期は触れるだけで痛みを感じることもあります。しこり:固まりとなることで、治療前よりも膨らみが目立ってしまうことがあります。色素沈着:血管に沿った皮膚に茶色い色が付きます。これらの問題は硬結がゆっくりと分解されるに連れて改善していくのですが、改善には数ヶ月から数年といった時間を要することもあり、患者さんの満足度を大きく下げてしまいます。
このように血栓による硬結が問題となることがわかっていますので、硬化療法を行う際には血栓対策が重要となります。まず、血栓を予防するために圧迫を行います。治療した部位をしっかりと圧迫することで、そこに血液が流れ込むのを防ぐのです。ただ、実際にはそのような圧迫を患者さんによって続けていくことが難しい場合が多く、完全に血栓を予防することは不可能に近いです。なので、現実的には生じた血栓を取り除くことを考える必要があります。硬化療法部位に生じる血栓は、初期は固体ですが、2-3週間後に液体に変わります。そのタイミングを狙って、血管に針を刺し、内部の血栓を取り除くことができます。
山本 崇
やまもと静脈瘤クリニック




