静脈瘤は下へ進む?
患者さんに静脈瘤を説明する際に、静脈瘤が上から下に進んで行くような説明をします。伏在静脈と深部静脈の合流部で故障が生じて、そこから落ちた血液が順に下の弁に溜まり、破壊し、また下に落ちる、と。確かに弁が壊れた静脈では血液は上から下に落ちています。そう考えると、そのような説明も完全な間違いではありません。ですが、私達が医学的に静脈瘤の進行を考える場合には、そのような上から下への進行は間違いであると考えられています。
なぜ、そのように言えるのでしょうか?理由はいくつかあるのですが、まずはっきりしていることは、私達がエコー検査をする中で、そのように上から下へ進行する患者さんの途中経過を見たことがありません。もし、静脈瘤が下に進むのであれば、早期の患者さんなら伏在静脈の中枢側から数個だけ弁が壊れた状態になるはずであり、毎年数千件のエコー検査を行う私たちは必ずその途中経過を目にするはずです。でも、そんな人はほぼいません。
静脈瘤は上へ進む?
逆の発想もあります。静脈瘤は上に進行する、と。最初はふくらはぎなどの側枝に故障を生じ、それが伏在静脈の故障を引き起こし、その伏在静脈の故障が少しずつ中枢側に上がっていくという理論です。実は、私たちはこの途中経過を数多く経験します。側枝や伏在静脈のほぼ全てが故障しながら、深部静脈との合流部だけが正常である患者さんは非常に多くおられます。他にも静脈瘤が上に進行することを示唆するような経験は多数あり、静脈瘤はどちらかと言うと下から上に進行するものだと考えています。
その間で、全てが同時進行するという考えもあります。静脈の弁が壊れた場所で起こる反応をミクロの視点から観察すると、静脈内の圧力が上がる、血管壁がダメージを受ける、局所で炎症が起こる、収縮能が低下する、静脈が拡張する、といった反応が同時に複合的に生じている事がわかっています。それらの反応が静脈瘤が進行する先端部に集中しているわけではなく、全体に同時に起こっているわけですから、厳密にいうと静脈瘤の進行は全体がほぼ同時だと言えます。
ただ、10年くらい長期間観察して、それを高速再生すると、静脈瘤は上に進行しているように見えるはずです。このような理論は、実際の静脈瘤診療の現場では軽んじられている事が多く、さらに学会の中でさえこのような議論が行われることはほぼありません。しかし、こういった基礎的な情報が、再発を減らす上での鍵となっている事がわかっており、実際に再発を減らすという目標を実現するためにとても役立っています。
山本 崇
やまもと静脈瘤クリニック




