むかーしむかし
その昔、医師と患者の関係は、昭和の親子のようでした。医師の立場が偉く強い権限を握っていますので、すべての決定は担当医師の考え次第でした。病気の状況などを患者さんに詳しく説明することはなく、その治療法を選ぶ理由を説明することもなく、決めた手術の術式と日程を告げるだけ。そこに患者さんが質問をする余地は無く、当然ながら何かのリスクなどについて知る機会も無く、ただただ全ての結果を受け入れるだけでした。医師の側から見ると、とても楽なシステムかも知れませんが、患者の側から見るととても抑圧的な状況ですので、いくつかの問題がありました。例えば、治療内容が分からない、思っていた結果と異なる、合併症の危険が知らされていない、もし詳細に内容を知っていれば別の選択をした、などの不満が残るのです。ちなみに、少なくとも私が研修医であった25年くらい前はこの状況が残っていました。
急に変わりました
その後、状況は急速に変わります。患者さんの「知る権利」、「説明を受ける権利」といったものが重視されるようになり、医療をめぐる訴訟などが増えてきたこともあって、特に先進的な病院を中心として、徹底した説明が行われるようになりました。実は、医療をめぐるトラブルの大半は、医師と患者お互いの小さな誤解が原因です。第三者から見ると、医師が医学的に間違っているようにも見えないし、でも患者さんの不満も理解できる。どちらが悪いわけでも無いのですが、内容の説明と理解が不十分だったためにボタンのかけ違いを生じ、トラブルとなる。いったんトラブルになると、後は「言った、言わない」の水掛け論のようになってしまい、両者ともに疲弊してしまいます。先にしっかりと説明することで、こういった無用なトラブルを避けることができるのです。
正直なところ、ここについてはいまだに進化の途中で、この時代にあってもしっかりとした説明をしない医師はたくさんいます。長く続いてきた抑圧的な時代の名残りのようなもので、最近のそのような変化を知る機会が無かった先生方もたくさんおられます。そして、内科や整形外科、皮膚科などの忙しい外来では、そのような徹底した説明を行うことは不可能ですから、患者さんも説明が無いことに慣れてしまっています。ただし、何か医学的に大きなこと(手術とか、入院とか)を行う前には、徹底した説明と理解を行うことが世界的な流れであることは間違いありません。
正しい選択のための説明
当クリニックに話を戻すと、私の考えは一貫していて、治療の選択は患者さんが行うものだと考えています。ただ、何も情報が無いと選択できませんから、現在の状態であったり、今後の予測、症状との関連、そして治療の選択肢やそれぞれの長所短所などをしっかりと説明し、場合によっては一旦持ち帰って家族に相談してもらい、本人の希望に沿った選択ができるようにサポートをしています。
山本 崇
やまもと静脈瘤クリニック




